須賀川のきうり天王祭

 秋の季節は各地で、豊穣を祝う秋祭りがさかんに催されている。東北の祭りと言えば8月上旬の暑い盛りにされるのをイメージするが、秋の祭りも仲々、情緒のあるものである。
 今日は郡山に住んでいた頃の思い出ではなく、去年の話をしたいと思う。

 昨年の6月末でサラリーマン生活を終え、暫らくはゆっくりしようと思っていた。8年前に転勤で郡山から出ていっても何人かとは定期的に連絡を取っていた。
 その中の1人か「7月に須賀川できうり祭りがあるから見に来てみれば...。」というメールが入って、興味があったので須賀川まで車を走らせた。

 それまでそのような祭りがあることも知らなかったが、須賀川市では、毎年7月14日の夜に、“きうり天王祭”という宵祭りが賑やかに行なわれるそうだ。
 と言うか、須賀川市がきうりの産地だったことも知らなかった。

 この祭りは、昔この地方に悪い病気が流行した時、岩瀬神社に祀られてある”牛頭天王”のたたりだとして、この地方でとれるきゅうりを供えて祈ったところ、病気がおさまったという伝説を元にしている。

 この祭りを境にして、浴衣を着る風習があって、市内や近郷から新しい浴衣姿の家族ずれなどの参詣人がつめかけてごった返し、参道となる旧国道には、綿あめ・おもちゃ・金魚すくい・植木やなどの露店がならび、客寄せの声に、須賀川の初夏の夜は更けていくとなっている。

 仕事ではよく行っていたが、須賀川のホテルには泊まったことがない。久し振りに市街地を廻って懐かしい思いに浸っていた。
 よく行っていた病院、クリニック、猫病院などがあって、何とも言えない甘酸っぱい感じがした。

 連絡をくれた彼女がホテルまで迎えに来てくれた。彼女のお母様は大病を患ってずっと入院している。その看病で疲れているだろう、彼女は痩せ細ってしまった。まるでメソセラピー手術でも受けたかのように...。
 残念ながら、去年のきうり天王祭は朝から小雨が降っていたが、ボクと会うことを喜んでいたのだろうか、彼女は妙に張り切っていて、デジカメで思い出を撮っていた。
 楽しい時を過ごせてはいたが、ボクが帰ればまた彼女は看病生活が待っている。それを考えると何とも健気な感じがした。

 次の日、昨日の彼女との祭りの時の一瞬一瞬の出来事を思い出しながら須賀川の街を去った。

 その彼女のお母様は病状が芳しくなく、治療の為、東京の病院に入院されているとのこと。付き添いで彼女も行っている。
 再び会える日が来るだろうか...。  


2008年09月29日 Posted by 杜の都の素浪人 at 19:55Comments(0)須賀川での思い出